Column
2026.06.20
24歳の冬。
借金取りが自宅まで来ていた。
インターホンが鳴っているのに、私は部屋から出られなかった。
21歳で起業し、「自分は何者かになれる」と信じていた。しかし現実は借金500万円。
その後、私はタクシードライバーになった。
そして10年後、「採用ドクター」と呼ばれる仕事をしている。
お仕事を通して学んだ事。そしてそこからの人生が好転した話を書きたいと思う。

美浜町からカナダへ
私は愛知県美浜町の出身だ。小さい頃から目立ちたがり屋だった。
人をまとめたり企画したりするのが好きだったが、その反面「すごいと思われたい」という気持ちも強かった。
中学時代、その気持ちは歪んだ形で現れる。
「海外に行けば特別になれる」
そう思い込み、カナダ留学を選んだ。
ただカナダから帰ってきて手に入れたのは自分が凄いと勘違いしたままの高い自己肯定と何かを成したい。という、根拠のない野心だ。
じゃあ次、もっとすごいと言われるためにはどうすれば良いのか。
21歳。50万を握りしめて英会話教室を開業した。
起業してうまくいく人、うまくいかない人。
その違いは能力や運ではなく、「何を目的にしているか」だと今は思う。
私は目立ちたいから開業した。
一方で、うまくいく人たちは「世の中をこう変えたい」「自分はこうありたい」という信念を持っている。
私は違った。
当時の私は、自分の野心しかない不純な動機で動いていた。
だから事業をしていても、意思決定の基準はいつも
「儲かるか、儲からないか」
「楽か、楽じゃないか」
だった。
もちろん、それらを考えること自体は悪いことではない。
ただ問題は、その先に目的がなかったことだ。
本当に儲けることを目的に据えるなら、実務力を磨き、営業力を高め、経営者として全力で突き抜けるべきだった。
しかし私はそうしなかった。
目的から逆算していなかったからだ。
だから、いらないホームページを契約した。
いらないコピー機を契約した。
広告も出した。
けれど肝心の営業には情熱を持てなかった。
失敗するべくして失敗したのだ。
24歳の冬。借金取りが自宅まで来ていた。
インターホンが鳴っているのに、私は部屋に閉じこもっていた。
あのとき初めて、自分の人生と向き合わなければいけないと思った。

再起をかけたタクシードライバー
部屋に閉じこもった冬。情けなさ、不安、そして捨てきれないプライド。
今までごまかしてきたことが通用しない現実から逃げていたのだと思う。
それでも時間は過ぎていく。
そんな私を救ってくれたのも、また両親だった。
借金を一本化し、「毎月これだけ返せば前に進める」という道筋を作ってくれた。
本当に情けなかった。
このまま何も変わらず生きていくのか。
しょうもないプライドと根拠のない野心を抱えたまま歳を重ねるのか。
そのとき初めて気づいた。
私は一度、自分自身と人生を見つめ直さなければならない。
ただ思っているだけでは何も変わらない。想いは行動によってしか形にならない。
そこで選んだのがタクシードライバーだった。
人生の酸いも甘いも知っている人たちが集まる場所。
偏見かもしれないが、何かに失敗した経験を持つ人も多いイメージがあった。
そんな環境なら、自分自身と向き合えるかもしれない。
そう考えた。
周囲からは、
「英語も話せるのにもったいない」
「そんな若くしてやる仕事じゃない」
と言われた。
それでも私はタクシードライバーを選んだ。
もう一度チャレンジするために、自分を変えたかったからだ。

タクシードライバーから採用ドクターへ
入社するときに決めていたことが一つある。もう二度と、目的のない努力はしないこと。
そして、もう一度チャレンジするために成長へ貪欲になることだった。
だから目の前で起きるすべての出来事を、成長のためだと捉えた。
二種免許の教習も全力で取り組んだ。
洗車も。ジュースを買ってこいと言われることも。
道を間違えて怒られることも。
すべて自分を成長させる材料だと考えた。
以前の私なら「面倒だ」で終わっていたことが、目的ができたことで意味を持ち始めた。
結果として、半年も経たないうちに本社へ呼ばれ、採用担当に任命された。
当時の常務が、私の姿勢を見てくださっていたのだ。
今では社長になられているが、私の人生における最大級の幸運な出会いの一つだと思っている。
採用担当になってからも考え方は変わらなかった。過去の失敗から学んでいた。
ただ作業を繰り返しているだけでは成果は出ない。目的から逆算して行動しなければ意味がない。
だから私は徹底的に「採用される側の気持ち」を考えた。
パンフレットを見直した。
サイトを改善した。
紙媒体をやめた。
パートナーや親御さん向けの資料も作った。
今振り返ればブランディング戦略だったが、当時はそんな言葉も知らない。
ただ目の前の課題を一つずつ潰していった。
Indeedが出始めた頃は毎日ABテストを繰り返した。
他社の面接も受けまくった。
どういう言葉が響くのか。どういう伝え方が心を動かすのか。
ひたすら研究した。
気づけば入社人員は前年対比150%。
その後10年。
マーケティング、採用、AI、商品開発。とにかく学び続け、改善し続けた。
採用人数は5倍。
応募人数は8倍。
そして今では、企業の採用課題を見れば、どこに問題があるのか仮説を立てられるようになった。
それは才能ではない。失敗と改善を繰り返してきた経験の積み重ねだと思っている。
がむしゃらに走ってきた10年。そしてこれからもどうせ走り続けるなら、この積み重ねてきたノウハウでお役に立ちたい。採用ドクターとしてまた新たにスタートを切った。